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「どこでもコンピュータの時代」まであと10年、技術者はどう生きるべきか?坂村健教授に聞く


IoTとTron

IoTの話が出始めたら、誰もがTron(トロン)が頭をよぎっただろう。むべなるかな。IoT(もののインターネット)と聞くとダイレクトにM2Mと考える。あるいは組み込みソフトの世界をイメージする。

トロンプロジェクトは多くは失敗したが、組み込みソフトC-Tronだけはメーカーの頑張りもあってだろうか成功したようだ。規模が小さく、競合も少ない、というか標準化を進めるためには、無色の坂村健は格好の接着剤になったのではないだろうか。氏の存在が無ければメーカー間の綱引きばかりに力が入って業界全体としては大きなロスを生んだだろうと想像できる。

上位概念となるB-Tronの試作は先行していたが、協力メーカーとの思惑と噛み合わず難航した。突破口とすべくシグマプロジェクト(国家プロジェクト?)の核となることを目論んだが、米国の圧力の有無は定かではないが、早々に空中分解してしまった。その後もB-Tronの実現を目論んだが、成功のためのシナリオは結局描けなかったようだ。

今はI-Tronというのかな。ウォッチしてこなかったからよく分からない。アップル流に頭にI(アイ)をつけたのだろうか。

忘れていたトロンを思い出させてくれたが、余談はさておいて、IoTとTronはどういう観点で捉えればよいのか考えてみよう。



http://engineer.typemag.jp/article/tron_iot

「どこでもコンピュータの時代」まであと10年、技術者はどう生きるべきか?坂村健教授に聞く 



http://news.mynavi.jp/articles/2014/12/07/tron/

再び脚光を浴びる国産アーキテクチャ「TRON」 - 坂村節がきわ立った「2014 TRON Symposium」記者会見より

1 組み込みシステム用OSでトップシェアを誇るTRON
阿久津良和  [2014/12/07]

すべての"モノ"をインターネットにつなげるIoT(Internet of Things)はIT各社が注目し、2014年のキーワードに数えてもおかしくないほど認知度を高めた。そのIoTを実現する可能性の1つにTRON(トロン)プロジェクトがあるのをご存じだろうか。リアルタイムOSの仕様策定を核に、「どこでもコンピューター=ユビキタスコンピューティング環境」を目指しながら、1984年から坂村健氏を中心に続けてきたプロジェクトだ。

今年で30周年を迎えるTRONプロジェクトを記念し、YRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、最新の成果を紹介する「TRON Symposium -TRONSHOW-」を、2014年12月10日~12日の期間で開催する(場所は東京ミッドタウンホール)。IoTプラットフォームとなる「T-Kernel」や「μT-Kernel」といった組み込みリアルタイムOS、IoTの基盤となるuIDアーキテクチャ2.0を中心としたユビキタスID技術などが披露されるという。技術協賛として、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)を迎えている。


  
それに先立ちYRPユビキタス・ネットワーキング研究所は、都内で記者会見を開催した。坂村氏いわく「そろそろ東大も"お役御免"になりそうな歳」としながらも、相も変わらずパワフルな発言や、TRONプロジェクトの現状をレポートする。

組み込みシステム用OSでトップシェアを誇るTRON

ちょうど2014年12月で30周年を迎えるTRONプロジェクト。坂村氏は「感無量。世界を見回しても、ここまで続けたプロジェクトは数えるほどしかない」と、長き渡る月日を振り返りながらも、「日本のコンピューター技術は世界に通用するものが少なく情けない」と吠える。


東京大学教授でTRONプロジェクトリーダーの坂村健氏

TRONの活躍する場は我々が意識していないだけで、実は身の回りに数多く存在する。有名なところでは、過日(2014年12月3日)に打ち上げ成功した小惑星探査機「はやぶさ2」の制御システム、デジタルカメラのファインダー制御部分などに用いられている。組み込みシステム向けのリアルタイムOSである「ITRON」は、世界的に見ても幅広く使われているのだ。


ITRONは組み込みシステム向けOSの世界シェア60%と、19年間連続トップシェアを誇る(T-Engineフォーラム調べ)

「はやぶさ2」の制御システムにもTRONプロジェクトの成果物「ITRON」が使われている

しかし、今やTRONが表舞台に立つことは少ない。PCやスマートフォンのような派手さがなく、組み込み(エンベデッド)システムの世界でTRONは"ネジや釘"のような存在になるため、部品のように扱われてきたからだと坂村氏は語った。だが、この状況が変わりつつあるという。それがIoTやビッグデータという概念・ソリューションだ。

"モノ"をインターネットにつないで情報を相互に制御する基盤として、我々が普段使っているWindowsやモバイルデバイス向けのOSは、あまりにも肥大しすぎている(Microsoftは組み込みデバイス向けOSとしてWindows Embeddedをリリースしている)。そこで、当初から組み込みデバイスを対象に設計したリアルタイムOSのITRONが、脚光を浴びることになったそうだ。

その結果、これまでTRONプロジェクトを支援した組織や団体の数は、1,023(うち企業は910、学術組織は112)におよぶ。坂村氏は「今年のTRONSHOWで、協賛企業・団体の名前を読み上げようと思ったが、それだけでイベントが終わってしまうので諦めた」と笑いを誘った。

また、T-Kernel(T-Engineプロジェクトで生まれた組み込みOSの一種)、および関連ソフトウェアの利用契約締結数も8,236を数える。これはあくまでもT-Engineフォーラムに申請があった数だけであり、坂村氏は「我々の知らないところで使われた例はカウントしていない」と述べる。締結組織の所属国数をカウントすると、世界76カ国で使われているそうだ。



T-Kernel及び関連ソフトウェアの利用契約締結数の内訳

坂村氏が今注目しているのは、アフリカ大陸の国々に代表される工業製品の浸透途上国だという。「日本のiPhoneシェアは異常に高いが、世界的に見れば大半はAndroidを使っている。だが、工業製品の浸透途上国では高額なスマートフォンではなく、従来型のフィーチャーフォンが好まれる」(坂村氏)。コスト面の優位性を含め、国内でも多く使われてきたTRONを採用した安価なフィーチャーフォンを、新たに生産する企業が増えていることを明らかにした。


T-Kernelの契約締結組織の所属国。近年はアフリカ大陸が増え始めたという

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http://news.mynavi.jp/articles/2014/12/07/tron/001.html

再び脚光を浴びる国産アーキテクチャ「TRON」 - 坂村節がきわ立った「2014 TRON Symposium」記者会見より

坂村氏、30年間を振り返る

ここで坂村氏がTRONプロジェクト30周年を記念して、過去のプロジェクト成果物を次々と紹介した。坂村氏は電脳建築学の分野でも名を馳せているが、ここではIT関連に絞って取り上げたい。往年のPCユーザーとって懐かしいのは、やはり「BTRON」だろう。


TRONをPC化した最初の「BTRON試作機」

日本のIT産業が世界の流れに乗り遅れないため、新たなオープンアーキテクチャに基づくPCとして、1985年からBTRONの開発プロジェクトが始まっている。坂村氏は今だから語れるエピソードとして、BTRONを取り巻く当時の状況を語った。1986年、文部省(旧)と通商産業省(旧)が作った組織を通じて、BTRONアーキテクチャを"教育用PC"とする流れがあったものの、USTR(米国合衆国通商代表部)が外交貿易障害リストの候補にBTRONを加えた。新聞などで大きく報じられたため、覚えている方も少なくないだろう。

 
1991年に市販したTRON PC「1B/Note」

「風評的な被害を受け、他国から日本は(BTRONを)やめろという空気が流れた。当時はMicrosoftの圧力だといわれたが、同社は(TRONプロジェクトの)協賛メンバーでもある」(坂村氏)と噂を完全否定。「大人げないため、ここでは語らないが、(発表会で配った雑誌「TRONWARE」を手に)ここで書いた」と述べた。

その一文を引用しよう。「実は米国の企業ではなく日本人だということは後年分かったことだ。(中略)孫氏は(中略)TRONつぶしに動いたらしい」と記述している。これは1999年に刊行した大下英治著「孫正義 起業の若き獅子」を元にしたものだ。個人的には日本のIT産業を左右する存在だったBTRONが各方面から支持されていれば……と"たられば"話を頭に描いてしまう。ただ、やはり"たられば"ではあるが、BTRONが日本で発展したとしても、世界的にはいわゆる「ガラパゴス化」した可能性もある。物事には多くの視点があるので、結果としての現状を中立的に受け止めるべきだろう。

 
「TRONキーボードTK-1」。読者によってはこちらも懐かしいはずだ

続く成果物の紹介で「TRONCHIP」が登城すると、「当時からARMと同じことをやってきた。結果的に失敗したのは未来を先取りしすぎた」(坂村氏)と過去を振り返った。当時は大型コンピューターがまだ主流だったため、TRONCHIP上でCOBOLコンパイラをどのように開発すべきか、といったズレた意見が少なくなかったという。

 
TRONCHIPの1つ「Gmicro200」は日立製作所が実装した

T-Engineプロジェクトについても「Raspberry Pi」と比較し、販売戦略の面で後塵を拝したことを認めていた。T-Engineのハードウェアは仕様に沿って各社が販売するため高額になってしまったが、Raspberry Piは数十ドル程度。「クラウドファンディングのように流動的な協力環境がある米国と、ネット時代に即した制度やシステムがない日本では難しい」(坂村氏)と、当時から現在に続くプロジェクトの苦労を改めて振り返っている。筆者には「日本でなければ(T-Engineはもっと)成功したかもしれない」という坂村氏の発言が印象的だった。

 
T-engineプロジェクトから生まれたハードウェア。モバイルデバイスからスイッチなどあらゆる場面に用いられる

いずれにせよ30年という長き月日を振り返ると、TRONプロジェクトはすべてにおいて「発表するのが早かった」のだろう。一足早く未来を先取りしても、妨害する人々や制度上の理由で苦難を強いられた例は枚挙にいとまがない。だが、坂村氏の発言は明るい。

「ダメだといい続けると本当にダメになってしまう。だからこそ『次』を目指す活動が必要だ」、「プロプライエタリソフトウェアではなく、ソフトウェア開発者自身が社会に役立つことに価値を見いだせるソフトウェアソリューションを目指したい」と語っていた。

そんな坂村氏を始めとする各プロジェクトチームは、TRONプロジェクト30周年を記念したWebサイト「TRON PROJECT 30th Anniversary」を公開し、2014年12月10日~12日、東京ミッドタウンホールで最新の成果を紹介する「2014 TRON Symposium」を開催する。坂村氏が目指すTRONの世界を知りたい方は、訪れてみてはいかがだろうか。

阿久津良和(Cactus)



トロンも30年かと思って眺めたらすっきりスルーで話が流れている。もっと先があったはずなのに。感謝の少ないレビューだ。

いずれにしても、坂村健が描いた最初のコンセプト(上から下まで統一されたアーキテクチャーの世界?)に世の中は漸く一歩近づいたことに間違いはないでしょう。



IoTの本質をどう捉えるか?

標準化作業の修正を要求してくる。仮にTRONが組み込みソフトOSのトップシェアであっても修正作業の後はどうなっているか。ライセンスはどうなるか。浮かれたチャンスでなく根こそぎ取り込まれてしまうリスクの面を認識すべきだろう。海外ベンダーから見れば日本メーカーを引きずりおろすチャンスと捕らえているだろう。TronのIoT対応のシナリオを描けているのか?。

IoTのいう物とは?

単純なことから。物の大小は問わないという理解。多分に複合的な概念として理解することが必要だろう。上から下まで統一的な概念でコントロールするには、上位のOSがそのまま降りてくるかも知れない。何処かのデータセンターのスパコンと家の冷蔵庫がやり取りをしている。面白いと思うか恐ろしいと思うか。



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